封切り時に見逃しやっと見ることができた。
15年越しか。
出演のほとんどの方が鬼籍に入ってしまってるだろう。
賠償されないことよりも、
日本軍が中国で行ったこと、
その中枢、指揮側の行動を裁判所で
暴き出し認めさせたかったのだろう。
20年程前、名古屋に住んでた。
今池にあって通ってた医院の院長は当時90代で元軍医だった。
中国戦線とフィリピン戦線に従軍。
中国は楽だった。
フィリピンはひどかった。
向かう輸送船の船団がほとんどアメリカの潜水艦で撃沈された。
自分が乗ってたのは小さくて喫水が浅かったので魚雷が艦底の下を抜けて行ったからあたらずに上陸できた。
その後がひどい。いや、アメリカは強かった。島んなかをずーっと逃げてばかりだった。
で、弾も無いし食いもんもない。
自分が従軍した日本軍同士で共喰いしたり、
そのため殺しあって死に損なった兵隊を
弾が無いんで将校に頼まれてメスで息の音止めたりしたとか言ってたな。
「自分はお互いに殺し合うのはやめろと言ってたんだけどね。『いや軍医殿、あやつは気に入らんです。やります』とか言って殺して食うんだよ。で、弱った身体でいきなり肉食うから腹壊してそいつも死んだり倒れたりする。わしは肉を食うなら一緒に草を炊いて草も食えと言ってたね」
「先生はどうしてたんですか?」
「ワシはこっそり干し肉を隠し持ってて、それでしのいだんで、人間は食わんですんだ」
絶対食ってるな、このジジイと思ったものだが。
患者がほとんど居ないとこだったので、
適当に相槌打ってるといろいろ話してくれた。話が聴きたくて病気が治っても
治らないふりして聴きに通った。
診察室の二階が自宅みたいで
李香蘭の「夜来香」の別バージョン(歌詞があわれ春風に〜で始まるものではなく、風はそよそよと〜のもの)とかかけてるなが流れてたりして、この歌詞版を実際耳にするのは初めてだなとかけっこう面白くもあった。
「先生もほんとは人間食べたんでしょ?」
「いや実は」と出るかと期待してたが、
最後は警戒されて話してくれなくなった。
貴重な証言だった。
全部録音しておけば良かったな。
もう死んだかな。
映画内で印象深いのは、
主人公である松山氏が
中国へ赴き、自身が初年兵時代に
兵隊教育の仕上げとして刺し殺した中国人の子孫をたずねた場面。執拗にその刺殺した中国人の立場や状況を問いただす。
その後宿舎でインタビュアーになぜあんなに詰問したのかと問われ、その意図に
「その刺殺は正当性があったかもしれないという証言を得ることで自身の罪悪感を軽めたいという意識があった」と認める。
「そのような詰問をして自己正当化を図ろうとしたのは自身の中の日本軍兵士がまだ生きている」と自己評価を下す。
彼らは自らを「蟻の兵隊」と称する。
その蟻に具体的な戦争( 殺人、略奪、強姦etcいわゆる三光)を行わせたのは
誰であり、その蟻を踏み潰し、無かったものと消し去るのは誰なのか?
戦後日本、日本人、アメリカ、ポツダム宣言、連合国体制などなど。
戦後レジームの総決算を唱える
安倍晋三氏にご覧いただき感想を伺いたい映画でもありました。